2.クセモノ

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誉田の背中に 「たから……」って呼んでみる。聞こえても聞こえなくてもどっちでもよくて、呼んだ。 ぱっと振り返った誉田が 「何? 今度はそう呼ぶことにした?」 「呼んでみただけ」 「そっか、なんだ。残念」 ……残念?どういう意味だろ。 「……清夏(きよか)」 不意に名前を呼ばれて動揺する。 「え」 「って、可愛い名前だね」 「あ、ありがとう」 「夏生まれ?」 「う、うん、そう。8月」 「何日?」 「8日」 「はは、末広がり……」 「え?」 「八って漢字で書くと末広がりだろ?縁起がいいっておばあちゃんが言ってた」 ああ、そう。おばあちゃんね。長寿の家系って言ってたな。 「そうなんだ」 「……お祝い、しないとね」 「……」 「えーっと、清夏は何が欲しいの?」 は、え、名前……。 「か、彼氏……」 って、何を言い出すのか。私よ。 「そうか、恋がしたいんだもんね。それはそうか。片思いより、恋人のがいいね。ちょっとそれは誕生日には間に合わないかもね。だから……俺で我慢して」 すんなり、受け入れてくれたけど。 ん?俺で、我慢、して? 何を?え、プレゼントを俺?いや、ないない。過ごすのが? ちょっと、わけがわからない。 どうやら、足も止まってしまっていて、ものすごく怪訝な顔をしていたらしい。 「はは、清夏、すごい顔。急ご、真っ暗になったらダメだからね」 ……何だろう。校門を出てからずっと、 とにかく、ものすごく戸惑う。
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