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「ねえ、急ごうってどこへ行くの?」
「人気のないとこ」
そう言ってまた意味深に笑う。
それって……どこ?
意図せず、ドキッとしてしまって、ドキッとしたのは殺られる心配のドキッではなくて……
とにかく、ただただ、戸惑いながら誉田と歩いた。
──
本通りから1本、2本……どのくらい進んだだろう。帰り道に自信がない。
着いた先は、古い家屋。
……本気で人気のない場所だった。
さっきとは違うドキリが胸にやってきて、ハラハラする。
誉田がそこの前で、ペンキの剥げた古い鉄製の小さな門を引いた。
ギィと情けないような音がして、それが余計に恐怖心を駆り立てた。
「ここ、数年前までおばあさんが住んでいたんだけど、今は空き家になってるんだ」
「……」
え、廃屋ってこと?住んでいたってことはおばあさん……亡くなったの?
そんなの勝手に入っていいのだろうか、いやそもそも入ってどうするのだろう。
わたしが門を通るのを確認すると、誉田が門から手を離す。
私の後ろで門はギィギィと不気味な音を数回立てて、静かになった。
誉田はそのまま家の裏手へと回っていった。
薄暗い夕暮れ、お化けでも出そうな廃屋。
ここに何の用事があるというのだろう。
私はそこで立ち止まっていた。
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