2.クセモノ

10/13
前へ
/183ページ
次へ
「ねえ、急ごうってどこへ行くの?」 「人気(ひとけ)のないとこ」 そう言ってまた意味深に笑う。 それって……どこ? 意図せず、ドキッとしてしまって、ドキッとしたのは()られる心配のドキッではなくて…… とにかく、ただただ、戸惑いながら誉田と歩いた。 ── 本通りから1本、2本……どのくらい進んだだろう。帰り道に自信がない。 着いた先は、古い家屋。 ……本気で人気のない場所だった。 さっきとは違うドキリが胸にやってきて、ハラハラする。 誉田がそこの前で、ペンキの剥げた古い鉄製の小さな門を引いた。 ギィと情けないような音がして、それが余計に恐怖心を駆り立てた。 「ここ、数年前までおばあさんが住んでいたんだけど、今は空き家になってるんだ」 「……」 え、廃屋ってこと?住んでいたってことはおばあさん……亡くなったの? そんなの勝手に入っていいのだろうか、いやそもそも入ってどうするのだろう。 わたしが門を通るのを確認すると、誉田が門から手を離す。 私の後ろで門はギィギィと不気味な音を数回立てて、静かになった。 誉田はそのまま家の裏手へと回っていった。 薄暗い夕暮れ、お化けでも出そうな廃屋。 ここに何の用事があるというのだろう。 私はそこで立ち止まっていた。
/183ページ

最初のコメントを投稿しよう!

630人が本棚に入れています
本棚に追加