2.クセモノ

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「清夏、こっち。裏から入れるから」 ……入る?中に? 入って何をするのか、何をされるのか ぬるい風が吹いてきて、後ろの門が、ギィと鳴る。その音に身を縮めた。 怖い……。 「……清夏?」 もう一度、呼ばれ、ハッと顔を上げた。 ここに一人で立っているのも怖い。仕方なく呼ばれるまま反対側の誉田のところまで向かった。 私がそこへ到着すると、「ああ、そうか」と言った後、私の手を取ると、そのままくるりと前を向いた。 「ここ、持ってて」 その手を自分の腰あたりへ持っていき、私は言われるがまま、誉田のシャツ……だけじゃ心もとないのでシャツとズボンをガッツリ掴んだ。 「ふっ、まあ、いいや」 誉田はゆっくり進む。少し私に振り向くと人差し指を綺麗な形の唇に添えて、声を出さないよう指示した。 暗くなり始めた外の方がまだ明るいくらいの室内は思ったより、傷んではいなかったが、淀んだ空気の匂いがした。以前住んでいた人の匂いも加わって、誰かいてもおかしくない気がして、ますます手に力がこもってしまう。 「……いた感じはするな」 小さく誉田がそう呟いた。 「ひっ」声が出そうになって、私は慌てて空いてる方の手で口を押さえた。 夏の熱気がこもった室内では、夕方とはいえ数分で額を汗が流れる。
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