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そんなに広くない、平屋の家なのですぐに見終わった
「……また、明日だな」
誉田がくるりと体の方向を変えたせいで、真っ暗な中で、向き合う形。私の手がそのままなせいで、抱きついたみたいになって、あまりにしっかり握っていた手は、頭でわかっていても強ばって離れてくれない。
誉田が手を離してくれて、今度はそのまま出口へと向かった。
自分の手のひらがじっとりと汗で濡れていることで、恥ずかしくて、それでも怖いから、なのか手を振りほどかずにいた。
外へ出ると、手は離され、誉田は厳重に引き戸が動かないように固定している。
手入れのされていない小さな庭は草がすごい。
「そこ、草で見えないけど飛び石があるからつまづかないように」
そう言ってもう一度私に手を差し出す。
あまりに自然な仕草さに、私も素直に手を預けた。
ギィと門が鳴る。その門も丁寧に閉めると
「ん」と、もう一度手を差し出して来た。
「ごめん、思ったより暗くなるのが早かった」
私の手を握ると歩くリズムに合わせて自然にその手が揺れる。
「……いや、大丈夫」
「また明日」
また明日、ここへ来るのか。
これって……肝試し……だよね?よくわからないけど。
いや、それより、手。
「落ち着いた?」
暗くてよく見えないせいか、誉田が顔を近づけて私の顔を伺う。
「うん」
「大丈夫、大丈夫」
なぜか誉田がそう言って、きゅっと繋いだ手に力を入れた。
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