1.ペア

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私はいつもこうだ。いいなあと思った人には好きな人、もしくは彼女がいる。 慌てて急ブレーキをかけたものだから、いつも煮え切らない行き先を失った気持ちだけが残る。思われる陽葵も羨ましいけど、日野くんみたいに好きな人に「好き」って思いっきりぶつけてみたい。だから、日野くんは私の憧れ。 ── 陽葵と仲良くなったのは友達の友達だったからという単純な理由。今ではその友達より陽葵の方が仲良しだ。 もう一人、いつも私たちと一緒にいるのが佐鳥(さとり)聡子(としこ)だ。 実は去年から同じクラスだったけど、違うグループにいた。真面目でお堅い感じが苦手だったけれど、2年生のクラス替えでは去年から同じクラスだったのは聡子だけで、一人ぼっちは嫌だし、仕方なく声をかけた。仕方なく声をかけるとか失礼かなと気にしていたけど「声かけてくれてありがとう、細川さんでも、一人よりはマシ」と無表情で言ってのけた聡子に、こいつもっと失礼だなと、気が抜けた。聡子がこんなんなものですっかり腹を割って話せるようなったし、何より聡子は裏表がない。「清夏、その髪型、超変だよ」と放課後に言ってくる女だ。 「朝に言え、朝に!」そしたらすぐにほどいたのに! 「朝はどこがおかしいのか気づかなかったから……」 ちょっと気付くのが恐竜並みに遅い。 横で陽葵がそわそわしている。やっぱ、変だと陽葵も思っていたのか。 陽葵はわりとそういうの言えなかったりする。変な気遣いの人。 そんなこんなで、3人仲良くやっていた。
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