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一応ね、ズルはズルだし、でも大歓迎なズルだったけれど「もう!」と、かたち上は陽葵に言っておいた。
「じゃあ、俺は細川さんとだ」誉田くんが『2』と書いた紙をピラピラ振ってみせた。
嘘……2!?どういう事!?取り換えたはずなのに。
えええええ!?おわ、終わった!終わった人生!終わった!!
「俺、3」塔ヶ崎くんがそう言うと、陽葵は日野くんと顔を見合わせて
「よろしくね、ひまちゃん」
日野くんがにっこり笑った。嬉しそう。嬉しそう。
その場でペア同士連絡先を交換する。
そして
「じゃあ、9月1日に」
「どのペアが一番、楽しめるか」
「へーい」
やる気があるのかないのか、気の抜けた返事をして塔ヶ崎くんはさっさと教室を後にした。
「じゃあ、ひまちゃん、また連絡するねー!」
ぶんぶんと手を振って日野くんも教室を出る。それに「じゃ」とだけ誉田くんが私に言って日野くんに続いていく。
残った私たちは、それはそれは盛大にため息を吐いたのだった。
「……もうすでに楽しくない」
聡子が蒼白な顔でそう言った。確かにぃ。塔ヶ崎くんと聡子では、一番合わないだろうなあ。
対極にいそうな二人。見た目も中身も。
私も誉田くんとペアになるくらいなら、塔ヶ崎くんの方がまだいい。そう思った。
いや、もういいや、正直に言う「日野くんが良かったなあ」と小さく呟いた。
私たちはそこから会話もなくとぼとぼと教室を出て行った。
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