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「空」
夕方に歩道橋から空を見上げるのが好きだ。
まるでミニチュアのような世界と飴色のフィルター、ちらちらと淡くきらめく世界に、ここにいるのに切り離されたような、時間が止まっているような、不思議な温かさと柔らかな痛みを覚える。
甘くて懐かしくて切り離される感覚と相まって、包まれるような優しさを感じて、その感覚が好きでこの景色を眺めながら飲むりんごジュースが好きだった。
ある日ふと空を見上げたら水色の中にピンクとオレンジが流れて溶け合っていた。
サイダーと砂糖菓子と飴色の空。
まるで夢のようで切り離された1ページのようで、だけど私はここにいて、泣きたいような気持ちになった。
夢のようであればあるほど私がいるのは現実なのだと感じた。
切り離される感覚、日常の中の空想、ずっと同じページにいるような止まったような気持ち、だけど時間は進んでいて。
優しい気持ちになりたくて、りんごジュースをひとくち飲む。
りんごジュースは少し切ない味がした。
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