タイム・カマドウマン

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タイム・カマドウマン

 窓際の壁に大人の身長ほどもあるトラバサミが立てかけてある。まるでクワガタムシの角のようだ。他にもロボットロボットした足が転がっており、何かの試作品のようだ。 「あれを前につけるとヤバいことになりますね?」 「どういう意味だね。絶好調」 「またまた…」 少女は必至で笑いを堪えつつ「このタイムカマドウマンが甲虫の王者に」  緊張をほぐそうと少女が冗談めかすと、博士が一喝した。 「ジョークでもそんなことは言うな。最近はいろいろと締め付けが厳しくなっておるからな」  彼は窓の外を行きかう日の丸印のドローンを恨めし気に見た。  少女が人差し指でポツポツとキーを叩いた。2から始まる四桁の数字を博士が確認すると、いっきにアクセルを踏み込む。  すると車体を囲む実験機器が消え失せ、七色の流星群が飛び去った。ぐんぐん加速し、ベルトが下腹部に食い込む。  やがて、突き上げるような衝撃がやって来て、世界が旋回し始めた。 「キャーッ、博士!」 「花子君、足を踏ん張って頭を低くするんじゃ」  どうやら絶好調のファーストネームは花子のようだ。  二人の意識は翻弄される車ごと闇に飲み込まれた。  まどろみから醒めると、冷たい水が身に染みた。幸い無事だったようだ。博士はよろよろと立ち上がり、車と助手を探した。  どんより曇り空に何もない平面がどこまでも続いている。
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