スイカのゆみちゃん

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スイカのゆみちゃん

 7月の終わりだったか、アメリカ産のスイカが入荷した。オーガニックでその名前がなぜか、『裕美』、YUMI。  大きな木の入れ物に漢字も表示されている。その農場のオーナーの奥さんが日本人で裕美さんっていう人なのかと一人で妄想。  けど、オーガニックだから少し高めだった。確か一個千円くらいだったかな。他のは600円くらいだから高い。  ある時、中国系の男性が急いで入ってきて、このスイカを買った。でも、値段を見てびっくり。 「え、高い。なんで?」っていうから、オーガニックですと答えた。  その人、キョロキョロして、「これ、いらない、見た目もあまりよくないし、他のスイカにする」って。  返品状態になってしまった。  私は心の中で、『出戻り裕美ちゃん、なんてかわいそう。見た目が悪いからって戻されるなんてね。お客さん、他の安くて見た目のいい子に変えていったよ。せつないね』と語りかけました。  ちょっとだけ可哀相で、少しだけ笑えた出来事でした。  見た目が悪い、う~ん、別にでこぼこしているわけじゃない。でもたしかに他のスイカにくらべると特有の緑と黄緑の縞模様があまりなく、深緑に近い球体って感じかな。皮を食べるわけじゃないのに。見た目だけで判断してはいけないんだけど・・・・。  一人でクスクス笑ったキャッシャ―の一日。
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