1人が本棚に入れています
本棚に追加
線香花火
親戚が家に遊びに来ると、庭で花火をやった。
昼間の暑さが残っているアスファルトの空気や、ずっしり暗い空。
灰色の古ぼけたバケツに水をたくさん張ってから、花火をした。
手持ちすすきやスパーク、噴出花火やロケット花火などを楽しんで、最後の締めはいつも線香花火だった。
線香花火をつけると、パチパチパチと小さな火花たちが静かに散る。
やがて、オレンジ色のみかんのようなまんまるがポタリと落ちるまで、私は静かにその様子を見ていた。
人生はまるで、線香花火のようだ。
小さな命が生まれて必死に輝き、静かに落ちる。
そんなことをぼんやり、幼心に考えていた。
花火が終わった後、水を張ったバケツに花火を入れるときのじゅわっとした感覚に、花火が終わった後に残った火薬の匂い。
お祭りが終わったあとのような、静かながらんとした夜ー……
最初のコメントを投稿しよう!