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早瀬悟は、爽やかで人当たりのよい青年だ。公務員として真面目に働き、自転車で通勤する健康さ、上司からも信頼が厚く、後輩の面倒見もよい上に、プライベートでも気の合う友人に恵まれていた。誰がみても、毎日を清々しく送っているのがわかる。
ただ一つの習慣を除けば。
「おい早瀬、会議だ、行くぞ」
「はいっ、あ、ちょっと先に行っててもらえますか」
「?」
悟は廊下の窓際に行き、スマホを持つ。そして耳に当て、何か話し出した。
「・・・大丈夫、もう少しで落ち着くよ、ゆっくり息を吸って」
その表情も口調も柔らかく、視線は窓から広がる空に向けられていた。
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