1人が本棚に入れています
本棚に追加
悟の2杯目のサワーが運ばれてきた時、LINEの通知も来た。目をやると愛菜佳からだ。
【悟、落ち着かないよ、怖い】
今日は課の飲み会だと伝えてある。彼はから揚げを皿に取り、頬張りながらとりあえず返信をした。
【今飲み会、あとで連絡する】
おしぼりで手を拭いていると、「何、彼女?」と同期の小川が小突いてきた。
「あ、あぁ」と少しにごすように、サワーを流す。また通知が来た。
【ごめん、ごめんね、不安で苦しいの】
「早瀬、優しいなぁ、オレなら電源切っちゃうよ」
「え、それひどくないです?」
「てゆーか、早瀬くん彼女いたんだ〜」
おいおい、どうしたんだよ、最近おかしいぞ。今日のような日はいつもなら連絡は帰宅後だろう。何があったのか。
悟は「ちょっと外すわ」と片手を揚げ、狭い廊下に出た。居酒屋だからどこに行ってもうるさい。
電話をかけると愛菜佳がすぐに出た。
「もしもし、まな?どうした?」
「悟、ごめんねぇ、もう苦しくて。うちに来てぇ」
語尾は泣き声に続いていた。
「何があったんだ?」そう口にして、少し察しがついていた。仕事のことだろう。
「さと、る、私もうダメかも、お願い助けて」
辺りが騒がしく、はっきりと聞こえない。
「まな、帰りに連絡するから、な、後で話聞くから」
「絶対ね、早く切り上げて、お願い」
「わかったから、落ち着いて、少し休むんだよ、じゃあ」
座敷に戻ると、小川に冷やかされた。
ふうとため息をつくと、また通知が来た。今話したばかりじゃないかよ、今度はサワーをゴクゴクと飲む。その間にも通知が続いており、さすがに悟は一度カバンの中にスマホを投げ入れた。
最初のコメントを投稿しよう!