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エンドレスゲーム(みやびの場合)
ボーイさん
『あと5分です!ご挨拶をおねがいいたします。』
いつもそうだ。彼らはこちらの状況とはお構いなしに声をかけくる。
みやび
『あと、5分だって。寂しい!私、こんな楽しくなっているのに。南さんにもっと遊んでいただきたかったです…』
丁寧に話すのはみやびの作戦のひとつである。
『もっと遊んでいただきたかったです』
ともう去らなければいけないことを伝えて
相手をさらに煽るのだ。
勿論それは南さんが喜びそうなサービスをしっかりした上での言葉である。
隣の部屋からも私と同じように、
甘い声をした金魚達の声が聞こえる。
ここは深い深い地下の水槽のなか。
金魚たちは自分を気に入ってもらおうと、
もっともっと甘い声と、自分にできる最大限の色を出す。
そして、お客様の膝のうえで美しい舞を魅せる。
本物の金魚はつり上げられたくはないだろうが、ここにいる金魚たちは違う。
釣り上げてもらって、はじめて自分に価値がつく。
だからこの5分間が勝負なのだ。
みやびは必死だった。
だってこの5分間をものにすれば…
釣り上げてもらえれば…
自分の価値を確かめられる。
そのゲームをものにするために、
みやびは南さんが喜びそうなことをした。
それが、多少ルール違反なことだったとしても、みやびはこのゲームに勝ちたいという気持ちが強かった。
なぜならば、ゲームに勝てばこの水槽のなかで
自分はまわりとは少し違う存在になれたように思えたからだ。
_そして5分後_
『ぴんぽーん』
みやびはボーイを呼んだ。
つまり彼女はこのゲームに勝ったのだ。
そしてまた、金魚達のエンドレスゲームは続く。
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