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ラジオはいつも返事を言葉で返さない。かならずノートに書いて返してくる。
「お疲れ、ラジオ」
〈お疲れ〉
「今日も授業、だるかったね」
〈だるくない授業なんてない〉
「たしかに、言えてる。でも、なんか明けない夜はないみたいだね」
〈夜が明けなければ、学校がないのに〉
ラジオの字は叩きつけられたミミズの死骸のようで、初めて見た時はなんと書いてあるのかまったくわからなかったが、交流を続けていくうちに、徐々にわかるようになった。
ラジオというのは私がつけたあだ名だ。授業中も休み時間も、机に突っ伏してラジオを聴いているからそう名づけた。他のクラスメイトが彼のことをなんと呼んでいるのかは、知らない。
「わかる。朝、起きたくないよね」
〈でも、ユウリは僕より早く学校に来てる〉
「一緒に登校してる友達に合わせてるだけだよ」
自分たち以外、教室には誰もいなかった。外からは運動部に所属する生徒たちの、はつらつとした声が聞こえてくる。
「ラジオは部活とかやらないの?」
〈やってどうするの? 疲れるだけだよ〉
「文化部なら、身体動かさないじゃん」
〈大勢と関わると息苦しい〉
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