0人が本棚に入れています
本棚に追加
ラジオは首を振ると、机のなかから新しいノートを取り出した。表紙には、黒いペンで大きく[バカ]と書かれていた。おそらく黒板前によく出没する猿たちの仕業だろう。排泄物で書いたかのような汚さで、臭いも漂ってきそうだった。
「くだらないことするよね」
ラジオは無言でノートをめくった。めくってもめくっても、白い紙に排泄物は塗りたくられていた。怒りというよりかは、全身の血が透明に変わっていくような虚しさがこみあげてくる。ようやく白紙のページにたどりついたかと思えば、十枚ほどしか残っていなかった。
〈よかった。まだ残ってた〉
「たぶん、ここで飽きたんだろうね」
〈せめてもの優しさなのかもしれない〉
「それはないよ。絶対」
〈だろうね。きっとこれ以上僕のノートに触れているのが嫌だったんだよ〉
なにも言えなかった。そんなことないよ、と言ってもどうにもならないことは痛いほどわかっている。
〈僕はクソ本だからね。みんなうんこには触れたくないんだよ〉
「ラジオはラジオだよ。クソ本なんかじゃない」
最初のコメントを投稿しよう!