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1/10日目
「先生、どうすれば人間やめられますか!?」
「いきなり何!?」
僕はそう言って椅子に座り、彼女の方を見る。
「いやぁ。人間やめれば、私だってもっと自由に生きれると思いまして」
「またそんなことを」
最近の彼女の口癖は「先生、どうすれば人間やめられますか!?」。昨日であったばかりなのに、かれこれもう30回は聞かれた。
「あのねぇ。人間に生まれた以上、人間として最後まで生きないと」
やれやれという具合に言うが、彼女は全く気にしていない。
「先生。私考えたんですけど、服を脱げばいいのではないでしょうか?」
「は?」
「だって、人間って動物のくせに洋服なんて着ているんですよ? だから、服を脱いだら猿くらいにはなれるかなって」
ちょっと待って、それはおかしくないか――と思うまもなく、彼女は衣服に手を当て、脱ぎだした。
「ちょっと、ちょっと! 待って! 第1人間は、猿みたいに毛むくじゃらじゃないから、衣服を着ているのであって――」
「知ってるよ、本で読んだし。でもずっと裸でいたら、毛も濃くなるんじゃない? 突然変異っていうの? よく分からないけど」
「ならないよ……」
僕は彼女の馬鹿さ加減に呆れ、目頭を抑え込んだ。そしてため息を1つつく。
「もう! また、私を馬鹿にして。私だって本気なんだから、先生も考えてよ」
「え?」
「人間、やめる方法」
これは彼女が、人間をやめるまでのお話し。
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