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3/10日目
「先生、どうすれば人間やめられますか!?」
今日も早速聞いてきた彼女に対し、僕はため息をついた。
「あ! また馬鹿にしてるでしょ。酷いなぁ」
「いつまでこんな事するつもり? もう諦めなよ。人間に産まれた以上、人間として生きないと」
「先生ってば。諦めたら、そこで試合終了ですよ!?」
それは少し、違うのではないか?
ていうか、試合じゃないし。
「そういえば、世界には人間の道徳的な事が通用しない場所があるらしいですよ。先生、知ってました?」
「……まさか、そこに行けば中身くらいは人間じゃなくなる、とか思ってない?」
「バレました?」
彼女はそう言って笑った。
全く、彼女の考えは聞いて呆れるものばかりだ。
「いいかい? そこに行ったとしても、命の保証はないし、そもそも君はここから出られないだろう」
「それは……。わかってるつもり、ですけど」
「じゃあ、こんな事したって無駄だって事も、わかってるんだよね?」
「……夢くらい、見せてくださいよ」
バサッと音がして、彼女はそっぽを向いてしまった。
僕はため息をついたが、彼女の気持ちはわからないでもない。
ずっとこんな所にいたら、人間だってやめたくなる。
「考えるのは、いいことだよ。……頭を使うからね。でも、たまには体を動かすことも、大事だよ」
そう言い残し、僕は出て行った。
でも、僕が出て行ったあと、また彼女が
「人間なんて、やめてやるー!」
と、いつもの調子で言っていて――
僕はクスリと笑ってしまった。
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