五分間の願いを。

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雨が強い。視界を遮る。 スピードを上げる。 いつもの穏やかは運転とは程遠い。 ぐんぐんと車を進ませる。 直線の道をひたすら走る。 早く、もっと早く行かないと。 アクセルを余計に踏む。 向かい風にのって雨が容赦なくフロントガラスの邪魔をする。 すると右前方に光が近づいた気がした。   目に何かが染み込んでくる。 右のこめかみからそれは伝ってきている。 気になって手で確認しようとするのに手が上がらない。次の瞬間、今迄に感じた事など無い激しい痛みが体中を襲う。車の前方に取り付けられていた時計が真横を向いている。そして自分もその時計と同じ方向を向いている。感覚的に察しがついた。意識が少しづつ遠のいていく。 彼女に会いに行かなければならないんだ。 こんな所で立ち止まっている時間はないんだ。 何とか体を起こそうとするが激痛が走って動かせない。 目の前が薄暗くなってくる。 ぼんやりと視界に入った時計を見つめる。 俺がもう少し早く店を出ていたら。 あと少し早く、あとほんの少し。 あと五分早く出ていたなら…。
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