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雨が強い。視界を遮る。
スピードを上げる。
いつもの穏やかは運転とは程遠い。
ぐんぐんと車を進ませる。
直線の道をひたすら走る。
早く、もっと早く行かないと。
アクセルを余計に踏む。
向かい風にのって雨が容赦なくフロントガラスの邪魔をする。
すると右前方に光が近づいた気がした。
目に何かが染み込んでくる。
右のこめかみからそれは伝ってきている。
気になって手で確認しようとするのに手が上がらない。次の瞬間、今迄に感じた事など無い激しい痛みが体中を襲う。車の前方に取り付けられていた時計が真横を向いている。そして自分もその時計と同じ方向を向いている。感覚的に察しがついた。意識が少しづつ遠のいていく。
彼女に会いに行かなければならないんだ。
こんな所で立ち止まっている時間はないんだ。
何とか体を起こそうとするが激痛が走って動かせない。
目の前が薄暗くなってくる。
ぼんやりと視界に入った時計を見つめる。
俺がもう少し早く店を出ていたら。
あと少し早く、あとほんの少し。
あと五分早く出ていたなら…。
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