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いつもと何も変わらない朝が来た。
コーヒーのいい香りがしている。
「パパおはよう。」
息子が言う。
「おはよう。」
「パパ、マーガリンはどうする?」
妻が言う。
その問いかけに二回頷く。
そしてさっきから気になっているもう一つの香りの方へ目をやる。不思議とその花を知っている様な気持ちになった。
「パパどうしたの?」
妻がちょっと心配そうな顔で話かけてきた。
「いや、なんだかこの花初めて見るのに昔から知っている様に思ったんだ。」
「あら、やっぱりパパ知ってた?」
「え?」
「お花選んでいた時このお花が目に入って、で、直ぐにパパがこのお花知っているんじゃないかと思ったのよね。」
遠い昔、いやもっともっと前かもしれない。僕は決して忘れてはいけない様な何かを思い出そうとしていた。毎回の様に妻が嬉しそうな顔で花束を買ってくる。その香りを嗅ぐ度にそんな気持ちに何故だかなった。そしておもむろに本棚に手を伸ばす。
『~季節の花々~』
1ページ目を愛しい人を見つめるような眼差しで優しくめくった…。
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