五分間の願いを。

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いつもと何も変わらない朝が来た。 コーヒーのいい香りがしている。 「パパおはよう。」 息子が言う。 「おはよう。」 「パパ、マーガリンはどうする?」 妻が言う。 その問いかけに二回頷く。 そしてさっきから気になっているもう一つの香りの方へ目をやる。不思議とその花を知っている様な気持ちになった。 「パパどうしたの?」 妻がちょっと心配そうな顔で話かけてきた。 「いや、なんだかこの花初めて見るのに昔から知っている様に思ったんだ。」 「あら、やっぱりパパ知ってた?」 「え?」 「お花選んでいた時このお花が目に入って、で、直ぐにパパがこのお花知っているんじゃないかと思ったのよね。」 遠い昔、いやもっともっと前かもしれない。僕は決して忘れてはいけない様な何かを思い出そうとしていた。毎回の様に妻が嬉しそうな顔で花束を買ってくる。その香りを嗅ぐ度にそんな気持ちに何故だかなった。そしておもむろに本棚に手を伸ばす。 『~季節の花々~』 1ページ目を愛しい人を見つめるような眼差しで優しくめくった…。  
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