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森の中を歩いて早三十分。
(悪魔里離れた所に住んでいるんだな)
やがて、サリゲナクが前方を指差しながら言った。
「ここが博士の家だ!」
随分とこじんまりとした家だ。周りには悪魔っ子一体いない。周囲と隔絶されたような印象をデーモンは感じた。
「よー博士!」
ノックもせずに勝手に家の中へ上がり込むサリゲナク。
(図々しいやつだな……。それだけ親しい間柄なのか)
しかし、家の中から返答がない。
「あれ? おーい! 博士ー! サリゲナクだよー!」
サリゲナクは大声で叫んだ。すると、奥の部屋から白髭を生やしたじいさん悪魔が出てきた。
「なんじゃ。サリゲナクか。どうした? やっと実験台を見つけたか?」
「実験台?」
デーモンが顔を歪ませながら言った。
「いやいや、何でもない。気にするな……。はーかせ!」
サリゲナクと博士は肩を組ながらデーモンに聞こえないように会話をする。
デーモンは首を傾げながら二体の様子を見つめる。
やがて二体は会話を終えた。そして、博士がデーモンの方を向いて口を開いた。
「やぁやぁよく来たデーモン君。何でも宇宙船がほしいんだとか」
嘘臭い笑みを浮かべる博士。
「そうなんです、ありますか?」
「あっ、いきなり訪ねて、失礼なのは承知してるんですが……」
初対面でいきなり宇宙船を貸してほしいなんて図々しいと思ったのか、少し遠慮がちに後ずさりをするデーモン。しかし、期待に満ちたまなざしでじっと博士を見つめる。
その期待に応えるように、博士は言った。
「ああ! あるとも。ぜひ君にあげよう。失礼なんてとんでもない。こっちはいい実験だ…。いやいや」
博士は目を泳がせる。
「本当ですか。ありがとうございます。でも、いいんですか?」
デーモンは気にせず博士に問いかける。
「全然いいんじゃ! まぁ、そうじゃな。いうなればまだ開発中の宇宙船でな。でも、心配は要らんよ。ちゃんと天使の星には辿り着けるじゃろう」
(あれを宇宙船と呼ぶか……)
両者の間で腕組みをして立っていたサリゲナクがさりげなく心の中で呟く。
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