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「すげぇなおい…。」
目前に広がるのは、真っ赤に燃え盛る炎と黒煙。
火事になっているのは、2階建てのお家。
近隣の住宅とは距離があるため、隣家に炎が燃え広がる心配はなさそうだが…。
(消防車足りないんじゃね?)
3台の消防車が集い、懸命の消火活動が行われているが、火の勢いは、全く収まりそうもない…。
「お願いです。息子を…息子を助けてください!」
そんな中、一人の女性が大声で叫んだ。
「落ち着いてください。たぶん助け出しますから、安心してくださいよ。」
たぶんって…。
(あの女性…。この家の人か?息子を助けてって…。まさかあの中に子供が?大変だ!)
建宮は心の中で、そう思った…。
だが…。
(しかし、俺に出来ることはない…。ただ見ていることしかできないんだ…。)
空想の世界では、勇敢に炎の中へ飛び込んでいき、華麗に子供を助け出すヒーローがいるのだろう…。
しかし、現実の世界ではそんな奴いない…
(悪魔ならいるけどさ…。)
周りの人々も同じ気持ちなのだろうか…泣き叫ぶ女性に言葉もかけず、ただ見ているだけ…。
消防隊員ですら、家の中へ救助しに行こうとする者はいない…。
(息子さん助けなきゃ…。でもなぁ…。家の中まで救助に行くとか無理だよ…。どうしようか…。)
消防隊員は困った様子で辺りを見渡す…。
すると…。一人の小太りの男と目があった。
開口一番。消防隊員は言った。
「君?助けてきて?」
「イヤじゃ!!どういう発想の持ち主だ貴様!唐突過ぎるわ!頭おかしいんじゃねぇか?」
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