住み処

48/55
前へ
/96ページ
次へ
「だ、大丈夫か…。」 建宮は男の子の横で膝をつく。 そして抱き起こそうとするが、 (なんやねんコイツ。重すぎるわ!動かせん。) 男の子は床に張り付いたかの如く、全く動かない。動かせない。 「すんません。デブで。」 頭をポリポリかきながら言った。 (やけに冷静だな…。) 「お、起きれるか?」 「無理っす。自分デブなんで。」 腹をポリポリとかきながら男の子は言った。 (なんかコイツ助けたくない…。) ジト目で男の子を眺めながら、ため息をついた建宮。 その時!突然頭上の(はり)が崩落した。 「うわぁぁぁ!!!」 燃え盛る梁が建宮・男の子・消防隊員を分断する。 「た 、大丈…ごほっ…。」 二人の安否を確認したいが、煙と炎が建宮の体力を大分奪っていたようだ。 声を発することができない。 それどころか…。 (あれれ…。体が…動かねぇや…。) いつの間にかうつ伏せに倒れこんでしまっている建宮。 (………。あれ?これやばくね?) つい先程までは、不思議と冷静な気分だった。 なんとかなるだろうと、軽いノリで男の子を助け出すつもりだった。 だが、その考えは今ではすっかり消え失せていた。 涙が止まらない。喉が焼けるようだ。 呼吸をするのも苦しい。暑い。たまらなく熱い。 (嘘だろ…。まさか死なないだろ、俺。) (た、助けてくれ…デーモン…。)
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加