1 鼻つまみ うつむく先に 拾う神

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 冷や汗をかきながらも、百合は対峙した顔を見つめた。  記憶にある顔と寸分違わない――声も話し方も、百合の肩くらいまでの背の高さも。そうして見てみると、着ているカーディガンまでおなじ気がする。 「あの、駄菓子屋のおばあちゃんの……娘、さん……?」  娘さん、というのに抵抗を覚えるていどには、年齢が高い。百合はしどろもどろになっていた。 「なつかしぃ! あなたまだこのあたり住んでるの? 区画整理でけっこうな人数が引っ越しちゃったでしょう、店畳んでから全然ちっちゃい子見なくなっちゃって」  彼女はきびすを返し、喫煙所のほうに足を向けていく。早鐘のような鼓動を打つ胸にチョコ菓子を押しつけ、百合はその背中についていった。  以前この町で区画整理があり、百合の家もそこに合わせて引っ越しをしていた。 「引っ越してとなりの市に住んでたんですけど、会社がこっちなので」 「そうなのぉ、最近そのお菓子販売機が売れてたんだけど、お姉さん買ってた?」 「あ、はい……懐かしくて」  手のなかにあるチョコ菓子は、温度で溶けはじめたのか、パッケージ越しでもかたちが変わっているのがわかる。 「そうよねぇ、あの子がこんなお姉さんになってるなら、あたしも歳取るはずだわぁ」
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