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「川……っ、えっ」
その音ばかりが耳に届く――ざぶりどぼんと、水に沈んでいくような。
「こ、これは……っ、水に沈んで……!」
しかし御簾から浸水してくる様子はなく、誰も慌てていなかった。
「うん、川にあるんだよ、国刺さんとこは」
「水のなかだなんて、最初は驚くでしょう。ああほんとうに会いたくない」
清巳は生気のない目をして、つくづくといった様子だ。
「でもさ、交渉は清巳がやらないと。あんたが一番うまくやれると思うよ」
うんざり顔の清巳は、オフィスで功巳がそうしていたようにひざを抱えた。
「しかたないでしょ、清巳は気に入られてるんだし」
「清巳、俺も手伝うからそうしょげるな」
横から八咫もそう口を挟む。
「八咫さん……いいんですか? 手伝っていただいても」
「この手間賃はべつのところで精算してもらう、気にするな」
清巳は返事もせず、自分のひざの間にひたいをくっつけている。
「あの、八咫さんってこちらの支店の方とか、そういう感じなんですか?」
そういえば、百合は八咫の明確な立ち位置を知らずにいた。どんどん尋ねていかないと、九泉香料の人間はろくに説明をしてくれなそうだ。
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