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あぐらをかいた国刺当主は、清巳のことは真剣に案じるらしい。清巳ににじり寄り、だが距離が縮まった分、清巳が後退って遠のいていく。
「仕事の話できているんです。ごりょうさん、如月さんの浄化を」
「浄化の必要などあるまい。おまえのところの小間使いなら、どこを向いても半死人ばかりだろうが」
百合はむっとする。口のはしを下げ、ねえやさんのことを軽んじたようにいう国刺当主を見上げ――はたと思い直した。
――半死人。
ねえやさんは半死人ではない。
彼女は完全な死人だ。
国刺当主の言葉がしめしているのは、百合のことだろう。
「あの、私は手違いで黄泉戸喫の状態になりましたが、半死人にも死人にもなるつもりは……いまのところは」
百合を見つめる国刺当主からは表情が消えていく。彼女は首をのばすようにし、百合に鼻先を近づけてきた。
清巳にばかり負担をかけていられない。
百合は生唾を飲み、それから口を開いた。
「こちらは治療の第一人者の方がいると聞いてきました。診ていただくには、条件が厳しいということでよろしいですか?」
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