6 枯れ屋敷 主たる名医が求めるものを

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 八咫が怒る姿を見るのがもういやになっていた。清巳がかたい表情をしているのも、功巳が困り顔をして口数が減っているのも。  それを見ないですむのなら、べつに黄泉戸喫を浄化してもらわなくてもいいのではないか。最悪、こちらはこちらで暮らしていけそうな気がする――職や住居を見つけなくてはならないが。 「黄泉戸喫は私の事故のようなものです。どなたかに迷惑をかけるなら、私は今回遠慮させていただこうかと」  ふっ、と国刺当主が息を吹きかけてきた。ぎゅっと目をつむり、開くと彼女は元の距離に戻っている。 「……なるほど。染みこんでいるのは最近のものだな。元々土台が半死人だ、なじみはよかろう」  会話が成立しているのか、していないのか。 「私は半死人では……」  頭の奥で明滅するものがあった。  それの意味がとっさにはわからず、百合は周囲の顔を見回す。  清巳を、功巳を、八咫を。カバンを引き寄せ、生地越しに鹿野にふれる。  いま、どうしてこんなことが気になるのかわからない。  ――半死人ではない。 「私は」  ――半死人だったら?  清巳が話してくれたことが頭をよぎっていく。
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