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すべて遠い昔のことだろう。
小境は地盤陥没で生き埋めになった。
――あのひと、昔ちょっと遺体としばらく一緒にいたことがあるんですよ。
だから悪臭が駄目だと。
「あの、私……」
芝田は首を絞められた。
――あのひともちょっと大変なんですよ。自責の念が強すぎて。自分は大丈夫だ、って納得したくて、きつい言葉を使ったりするみたいなんですよね。
だから責める言葉と態度があった。
ふたりとも――蘇生がうまくいった、と。
百合も過去にあった。
駅前で車が突っこんできた事故だ。
百合は現場だった場所を避けていた。その場に立ったときの、あの落ち着かない感覚を思い出す。
「もしかして」
頭にこびりつき、離れない思考がある。
――物流部にいた三人が三人とも、大事故に遭っている。
例外などなかったのではないか。
目の合った八咫が口をもごつかせた。
「……百合、九泉香料の採用条件だ」
「条件……?」
「みな、一度は息が止まっている。冥府を訪れ、こちらで息をし、だが現世に戻った」
半死人。
全員、一度死んでいる。
――百合もそのひとり。
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