6 枯れ屋敷 主たる名医が求めるものを

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「うちは優良企業だよ! 使いものにならなくなるまでっていうけど、人手が足りなすぎて残業三昧だっただけ、その分すっごいみんな稼いでたからね! いまは週休二日になってるし繁忙期でもなきゃ残業もしないよ、今日は例外なんだ、如月さん、あとで代休申請してね!」  清巳も功巳もなんだか早口になっている。図星なのだ――昔は国刺当主がいうような労働条件だったのだろう。 「いまはそういうことはないですが、一度冥府を訪れた人間の魂は柔軟なんです。どちらの空気にも耐えるので……有事のことを考えて、それが採用条件になっています」  有事については考えたくもなかった。 「小娘、きよの役に立てよ。おまえらは働くのが好きだそうだな、九重の……きよのためにせいぜい働け」 「それは大丈夫です、労働条件がいいので……」  百合は国刺当主の顔をうかがった。  ――浄化に対する報酬は、百合には用意できないのかもしれない。
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