6 枯れ屋敷 主たる名医が求めるものを

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 現世で暮らすには、どうあっても浄化が必要だ。それが不可能なら、もう百合は冥府――そことつながった屋敷で暮らすしかない。 「お母さんたちになんていおう……」  国刺当主が顔をしかめた。 「かまわんだろう。小娘はこちらで香料探しでもして暮らせばいい。がきたら、こっちでまた孝行してやれ。九泉も九泉で、冥府に小間使いを送りこめていいではないか」 「……薬師でもない素人の娘が、急に務まるはずがあるまい。国刺はどれだけ九泉を侮るつもりだ」  あからさまな怒りを孕んだ低い八咫の声に、百合は無意識にカバンを引き寄せていた。抱えたカバンのなか、鹿野がみじろぐのがわかる。 「儂は名案だと思うがな。浄化せずともやっていけるならそれでよかろう。きよの子が得られればそれが最良だが、無碍にされてはな」  九泉香料から――現世での暮らしから離れることも、百合は考えなくてはならないのかもしれない。  生地越しにふれた鹿野の身体が震えている。周囲が声を荒げる状況である。ちいさな身体をカバンに押しこんでいて、目を覚ましてそんな状況なら、鹿野にすれば恐ろしいはずだ。
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