6 枯れ屋敷 主たる名医が求めるものを

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「坊、母ちゃんはほかになんていったか覚えている?」  姿は巨大ながら、鵺の声は落ちついた女性のものだった。 「あとねぇ、やられたら徹底的に叩き潰せ」 「そのとおり。我が子が危険にさらされて、黙っていると思うか」  鵺のまなざしと声は、百合の頭上を越えて国刺当主に注がれ――どうやら功巳と清巳にも注がれていた。 「脅されて引く国刺ではないぞ」 「そうか、いいことだ。引かずにそこで見物していろ」  一歩鵺が足を踏み出す。  そして吼える。  吼え声はまさしく雷鳴だった。  巨大な鵺の周囲に無数の稲妻が出現し、空気を切り裂きながらあたりを駆け抜けた。  稲妻のいくつかが屋敷に直撃し、天井が崩落をはじめるのは瞬きひとつほどの時間のことだ。 「あぶな……」  思考停止しながらも百合は鹿野を強く抱きしめ、かばうように身体を丸めていた。ばらばらと大きな木材が振ってくる。足を崩していた百合にはそれ以上の身動きは取れず、目を閉じ身を強ばらせるしかなかった。  衝撃と激しい音が続き、肩や背に木片が当たる。しかし気がつけば百合はどこにも痛みを感じていなかった。 「……如月さん、大丈夫だよ」
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