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功巳の声に恐る恐る目を開ける。
顔に影が差していて――功巳と清巳が盾になってくれていた。
「お、おふたりとも……」
「百合ぃ、大丈夫かぁ」
腕のなかから鹿野が尋ねてくる。
「う、うん……なんとか……」
鹿野が腕から出ていくなか、そっと顔を上げていく。
屋敷の一部が崩れたのだ、いまだパラパラと木片が落ちてきていた。
その木片に混ざり、赤い花が咲いているのが見えた。
彼岸花によく似ている。それは花が開くとすぐに散り、飛沫となって落下していく。
「き……清巳さん……っ」
一本の長大な木材が、清巳の腹部を貫いていた。
背から腹部へと貫かれた彼の身体は、おびただしい量の血を流している。血はこぼれ落ちると彼岸花のように咲き、可憐な花びらを舞わせていた。
「な……なっ、なん……なんで……っ」
清巳だけでなく、功巳も怪我をしていた。頭部から血を流している。ひたいからあごへ、シャツを赤く染めていく。
「うまく助けるつもりでしたが、足がもつれました」
「どうしてそんな……血、血が……救急車を……どうしよう……っ」
「飲み過ぎましたかねぇ」
八咫の姿を探す。無事だろうか、手を貸してもらえないか――しかし瓦礫の向こうに見つけた彼は、国刺当主となにやらにらみ合っていた。こんなときまで、と息がつまったものの、百合の視線に気がついた彼は微笑み返してくる。
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