6 枯れ屋敷 主たる名医が求めるものを

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 百合はくたくたに疲れた身体に鞭打ち、大股に歩く国刺当主の後を追った。長い髪を持ち上げ、ふたりの女中が彼女にしたがっている。百合は彼女の身体の大きさが、自分とほぼおなじくらいになっていることに気がつく。 「どうした?」 「いえ、おもてに出たら、背の高さが……」  国刺当主はにやりと笑う。一瞬口が耳元まで裂けたように見えた。 「八咫の小僧がくるのに、歓迎などできるものか」  どうやら臨戦態勢になっていたのは、八咫だけではなかったようだ。  屋敷の裏手、雑木林に囲まれた大きな石の祭壇があった。  道の先にあるそれは遠目でも目立ち、そこが目的地だと悟る。  そこに鎮座するもの――緩く弧を描いたそれは、巨大な貝だった。  細かい線の入った二枚貝は、赤と黒と灰が混じり合った色彩を持っていた。国刺当主が近づくと、貝は自然と開いていく。 「小娘、裸になれ」 「えっ」 「裸になってここに入ってもらう。それがいやなら帰れ」 「これって……浄化ですか?」 「それ以外になにがある。はよう」  百合は周囲を見渡した。  ほかには誰もいない。  ただ横に立つ国刺当主が、腕を組んで百合を見下ろしている。女中たちは下を向き、そうするしかなさそうだった。 「さっさとしろ。きよの元に戻りたい」 「あ、そうですね。わ、わかり……わかりました」  初対面の相手を前に服を脱ぐのは抵抗があるが、百合は意を決した。  畳むのもじれったく、脱いだ服をひとまとめに丸めていると、国刺当主が顔を寄せてきた。
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