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貝の蓋が降りてくる。
閉じこめられることが怖くなったが、甘いミルクに似たかおりがして、緊張と恐怖感の捕縛が弱まった。
――これ、なに。
貝の内側はよく磨かれ、鏡のようになっていた。
百合が映っている。
閉じられるまでの時間、そこに映る自分の呆然とした顔に気がついた。
――なに、これ。
思考が続かなくなった。
貝が閉ざされ、闇になる。
なにも見えなくなったことに安堵した。
それが最後――鏡に映し出されていたのは、全身がバラバラになっていた自分の姿だった。
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