6 枯れ屋敷 主たる名医が求めるものを

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 百合が目覚めると貝は開いており、問題なく出ていくことができた。  誰かいないか、と周囲を確かめながら服を身に着ける。とちゅうで面倒になって、ストッキングは丸めるとパンプスごと手にぶら下げ歩き出した。  身体がバラバラになった夢を見た気がする。  明瞭に思い出せないが、完全な死の夢だったという意識ばかりが残っている。怖気立った百合は、それは思い出さないように心がけた。  身体は軽く、体調が最高にいいときの状態だ。  だが舞い戻った座敷には、鹿野を抱えたはだかの美少年がいて、百合は目をこする。  彼は国刺当主に鬱陶しそうな顔を向けていた。 「ああ、如月さん、おかえりなさい。浄化はうまくいきましたか」 「うまくいくに決まっている。おまえら、きよ以外は全員帰れ帰れ」  美少年の肩に着物をかける国刺当主の横、大きな行李がある。色取り取りの着物が入っていて、国刺当主はそれを次々と選んでは、美少年に合わせていっていた。 「このまま暮らせ。な? せめて成人まではいいではないか」 「けっこうです、帰りますから」  まだ歳のころは十代半ばか、どこから見ても清巳に似ており、百合は頭を抱えた。
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