6 枯れ屋敷 主たる名医が求めるものを

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 座敷を後にしたとき同様、畳の上に清巳の白い身体が横たわっている。  横たわっているが――いうなればそれは抜け殻だった。清巳に似せた、渇いたつくりもののように見える。 「だ、誰ですか……そのひと……どうしよう、清巳さんそっくり……」 「ああ、如月さんごめんね、こんなにはやく生まれ直すことになると思ってなくて……びっくりしたよね、ごめんね」  美少年が清巳とおなじ口調で話す。 「時期がはやくなっただけなんですよ。一応予定はしてまして、来年には私は消えて、べつの戸籍になる予定だったので」 「なにをいってるのか、よくわかりません!」  身体の調子はすこぶるつきによくなっているのに、百合の頭のなかが混乱している。 「ここにくる前、オフィスで話してたけど覚えてますか、休みに入るので思い残すことは、って」 「ああ、そんなことをおっしゃってましたが」 「仕事もあるていど片づけたら、生まれ直して身体を新調する予定だったんです。まあ表向きは事故死かなにかになりますが」  百合はまた頭を抱える。 「……それ、わりと世間ではあたり前のことだったりしますか? 私が知らなかっただけで」 「いやぁ、うち以外で聞かないよねぇ」
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