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母鵺が報復に追ってきた、そのためにこれは利用されたのだろう。
「でも……でもね……ま、またのびる……から……いいん、だ……」
「のびる?」
百合は目を凝らし、すっかり縮んだそれを見つめる。
「そう、だよ……のびる……また生える……」
触手のようと思っていたそれは、どうやら体毛らしい。百合が見つめると、首は照れたように顔をにやけさせた。
「そ、それで、これからはこちらに残る、ということでいいですか?」
「や……やだ……」
「無理して動くことないですよ」
「げ、元気に……なったら、またいって……いい……? そ、それで、い、い……一緒に、いても……い、い?」
寂しがり屋のかまってちゃんと功巳に評されていたが、それは縮んでもおなじようだ。
「あー……それはちょっと……こちらで養生なさったほうが」
「小娘、そいつを置いていくなよ! 忌々しい!」
国刺当主の怒声がかかり、百合は肩を落とす。
「ね……おしゃべり……だめ……?」
「……仕事中は駄目です。休憩時間でオフィス内で時間があるときなら」
妥協案を口にすると、首たちはにんまりとした。
「ゆ、ゆ……ゆ……ゆゆ……」
「はい?」
「ゆ……ゆ、百合ちゃんって……呼んでも……」
「やめてください」
「……うん……」
置いていきたくてたまらなくなる。
だが国刺当主がずっとにらみつけていて、百合はしかたなく首たちを置いていくことをあきらめた。
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