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すでに木箱が安置されていた牛車のなかは、全員が乗りこむとひどく狭苦しくなった。
若返った清巳は、国刺当主から借りた帷子を身体に巻きつけ、上機嫌そうな顔をしている。
「これで当面、寝ても疲れの抜けない生活から離れられますね」
それが何度目の生まれ直しなのか、百合は気になったが尋ねるのはよしておいた。今日はこれ以上のややこしい情報は耳に入れたくない。
鹿野が百合のひざで身体をのばすと、ちょうど車が動きはじめる。
帰れるのだ――百合ははやくも長々と息を吐いていた。
「これから面倒だな。国刺と九重で一悶着あったのは、知れ渡るだろうから」
八咫が背中を壁に預け、だらしなく足を投げ出す。足が功巳に当たったが、両者ともに気にしていないようだ。
「八咫さんってごりょうさんと仲悪いんですか? ちょっと怖かったです」
八咫はもう幽玄はまとっていない。九泉香料のオフィスにただいるだけの八咫と一緒だ。
「あいつは薬の管理を民草にもさせたいんだ。現状は質のいいものは富裕層が独占、紛いものが貧民層に流れているから、それをどうにかしたいそうだ」
「え……」
それはどちらかというと、いいことなのではないだろうか。
「勘違いするな、それは俺も――俺の一族もおなじだ。だがやり方が合わず、あそことは揉めるようになった」
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