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いまは毒気のない顔つきになっている。
「しばらくはあいつを殴る夢を見そうだなぁ」
八咫の口から出たのは毒のある声で、百合は鹿野を撫でてそれを聞き流すことにした。
「ごりょうさん絡みで、しばらくは業務にならないかもしれませんね、覚悟しておきましょう」
若返った清巳の声は、これまでとおなじく柔和な響きがある。
「そんなに大変なことになるんですか?」
「対応は如月さんにお任せしたいです。大丈夫ですよ、国刺の関係者の訪問が続くくらいです」
「無理じゃないですか? 私じゃ……」
「大丈夫だよ、関係者っていっても、くるのは全員ごりょうさんのお子さんたちだろうからね」
「……お子さんって、十人くらいいらっしゃるってほんとですか? すごいですよね……育児大変そう」
「時間を置いて産まれてるから、いきなりたくさんのお子さんの面倒見てたわけじゃないよ――ごりょうさん、けっこうな歳だから。あ、あのひとの着てたのあるでしょ、ぼろぼろのやつ。あれってぜんぶ、お子さんたちのおくるみとか着物でつくってるんだよ」
「そんなにいても清巳さんとの子供がほしいって、そうとう清巳さんのこと好きなんじゃないですか?」
露骨に清巳は顔を歪めた。
「ごりょうさん、男親はどうでもいいんですよ。現に子供ができると、お相手は全員放り出されてます」
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