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「思い出したわぁ、すっきりした! 思い出せそうで、ずっと思い出せなかったのよぉ」
目を向ければ、おばさんは百合に手を振っていた。
「うちの駄菓子はさ、リリちゃんがもっともっと歳取って、あっちにいってから食べにおいで。それまであたしもがんばって続けてくから」
「はい――ありがとうございます」
百合は暗い道を家路に向かって歩きはじめる。
明日には清巳死亡の報が出ることになっていた。
どんな死に方かは聞いてのお楽しみ、と功巳は一切教えてくれなかった。
社外の対応に物流部は追われるだろう。百合はそこに何日かヘルプで勤務することがもう決まっていた。
子細を打ち明けることはできないが、芝田と小境に会える。
清巳の言葉ではないが、思い残すことがないようにしよう――百合は心にそう決めていた。
――まずは夕飯に、たっぷりソースをかけたコロッケとメンチカツを食べるのだ。
暗い道だが、足取り軽く百合はアパートに向かっていった。
(了)
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