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さよなら、マイヒーロー
私、いつき、ゆうまは、幼なじみだ。母親同士が友達で、赤ちゃんの頃から一緒に過ごしてきた。
クールなゆうま。
乱暴者のいつき。
気弱な私。
ゆうまは、サッカーが好き。
いつきは、バスケが好き。
私は、読書が好き。
3人とも性格も好きな物も違うけど、とっても仲良しだった。
特にいつきは、家が隣だったから、毎日のように遊んでいた。
喧嘩っ早いから乱暴者に思われているが、実は誰よりも優しくて、人のことを大切にしているいつき。
私がいじめられると、真っ先に飛んできて、ゆうまと共にいじめっ子から私を助けてくれた。
「ゆうまと一緒に、絶対に愛菜を守ってやるから!!!」
それがいつきの口癖だ。
ゆうまの事も大好きだったけど、いつきは特別だった。
喧嘩が強くて、カッコいい。誰よりも優しいいつき。
いつきは私の憧れ。私のヒーローだった。
小学3年生になる頃には、私はいつきのことが好きだったと思う。明確な理由は覚えてないけど、いつか、いつきと結婚したいぐらい思ってた。まだ子供だったし、可愛らしい夢だなと自分でも思う。
それが絶対に不可能だったとしてもね。
中学三年生の秋。私はいつきに近くの公園に呼び出された。
馴染みの公園で、いつきはベンチに座っていた。
「おっす」と声をかけられて私も返事をする。
私はいつきの隣に座る。
気まずそうに、いつきは話始めた。
「あのさ、今日は大切な話があるんだ。」
いつきは緊張した様子だ。目が潤んでいる。顔も耳まで真っ赤っかだ。
めっちゃ恥ずかしいって言いながら話し始めるいつき。緊張しすぎて、肩に力が入っているのがわかる。
「愛菜。今日、愛菜に伝えたいってことってのは…」
大きく息を吸ういつき。
「ゆうまと付き合う事になった」
あぁ、やっとか…
いつきがゆうまのことを好きと自覚してから、いつきは変わった。短かった髪を伸ばし始め、身だしなみを気にするようになった。男ぽっい喋り方は女らしくなり、男の子と喧嘩する事は無くなった。
「愛菜には、たくさん応援してもらったから1番初めに言いたかったんだ!」
「ゆうまと付き合えたの、愛菜のおかげだよ!」
「本当にありがとう!」
持つべきものは愛菜だなって笑ういつき。
いつきがゆうまの事を好きだと教えてくれた時、私はとってもショックだった。でも、私は泣かなかった。
私はいつきが気づく前から、いつきはゆうまの事が好きだと分かっていた。だから、応援すると決めていた。
なんたって世界でいちばん大好きな女の子と、世界で一番大切な男の子の恋だ。
いつきの恋人がゆうまなら私も諦めがつく。
幼馴染冥利につきるってもんだ。
もう、いつきは私のヒーローじゃない。
いつきは、ゆうまのヒロインなのだから。
この思いは、私が一生閉じめておこう。
さよなら、私の初恋。
さよなら、私の思い出。
さよなら、マイヒーロー。
これからも、末長く彼らに幸せが訪れますように。
さよなら、マイヒーロー end
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