百合

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 もごもごと答えると、口元を隠しながらくすくすと笑った。 「私、変なこと言いましたか?」 「いえ、そうじゃなくて。あまりにも緊張してるから、ちょっとおかしくなって。だって、誘ってくれたのは如月さんですよ」  はっとなり、考えるよりも先に頭を下げていた。 「すみません! 黒木さんの言う通り、ずっと緊張してて、その、何を話せばいいのかもよく分からなくて、だから──」  短く息を吸い込み、そっと吐き出してから、もう一度「すみません」と頭を下げた。 「そんなに謝らないでくださいよ。ほら、顔上げてください」  そろそろと顔を上げると、何てことなさそうに笑顔でサンドイッチを頬張っている。 「如月さんは今、大学生とかですか?」 「え、はい。今四年です」 「じゃあ、二十一くらい?」 「はい。来月で二十二になります」 「そっか、それじゃあ六つ下か……」  どこか独り言のようにそう言うと、遠くを見るような目をした。  視線の先で、一瞬何かを見つけたような顔をした気がして、気になって彼の視線の先を追うけれど、ここから見える景色は来た時と何も変わっていない。単純に、自分の思い過ごしだと思った。 「あの──」  食べかけのサンドイッチを片手に、口を動かしながら短い返事が返ってきた。 「黒木さんこそ敬語で話すのやめませんか? 私の方が年下なんですから」  口を開きかけたけれど、すぐに考えるような表情を見せた。 「それじゃあ、そうさせてもらおうかな」  すっと目を細めた瞬間に目が合った。  息が止まった。おまけに、心臓も止まってしまいそうだと思った。 「それより、来月誕生日なの?」 「はい。来月の十四日です」 「えっ、俺も」  彼の答えにお互いが驚いた顔をしている。 「なんかすごいね。俺、誕生日が同じ人初めてかも」 「私もです。しかも、黒木さんと同じだなんて、すごく嬉しいです」  彼は、にこにこしながらサンドイッチに手を伸ばしている。 「如月さん──ああ、えっと。ゆりなちゃんの方がいいかな? それともゆりちゃん? もしくはゆりなとか?」  唐突なそれに思わず聞き返してしまった。 「呼び方、ため口なのにさん付けっていうのも、変かなって」
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