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夢? ううん、夢じゃない
私は机の上で目を開く。
デジタル時計には、「8月23日 19:00」と書かれていて、下からお母さんの「ご飯できたわよー」という声が聞こえる。
私は寝ぼけ眼で考える。
昨日は、私の誕生日だった。
成川くんが、私の家まで来て、自転車に二人乗りして、小学生にからかわれて、学校に行って、教室には、クラスメートのうちの来れる子が集まってくれて、黒板には私宛だけのメッセージが詰まっていて、みんなで写真を撮って……
まるで……まるで夢のようなひと時だった。
不意に私は不安になる。
――もしかして、私の妄想が膨らんだ、ただの夢だったんじゃないかな……
そう思ったとき、サイレントマナーモードにしているスマホのLEDランプが光っていることに気が付いた。
画面の電源を入れると、「なりが写真を送信しました」と書いてある。成川くんのLINEアカウントだ。
開くと、
「8月22日
黒川真夏さん!
Happy Birthday!!」
と中央に書かれた黒板と、集まったクラスメートとが写った写真が送られてきていた。
「写真送るの遅くなってごめん。改めて、昨日は誕生日おめでとう!」
というメッセージの後に、
「ちなみに、8月25日は、立花耕作の誕生日なんだけど、今後の誕生日祝いには、黒川さんも混ざってもらっていいかな? 休暇中誕生日だった人は、お祝いした日以降、祝う側のグループに入ってもらってるんだよね」
と続いた。
私は、まじまじと届いた写真を見つめる。
――夢じゃ、ない。
私は思わず一人でにやにやとしてしまった。夢じゃなかったー! と独り言を言って、思わず万歳をする。
「もちろん! お祝い側に入らせてもらう!」
と送ったあと、
「成川くん、その……去年の私の些細な一言をきっかけに、こういう素敵な企画を始めることにしてくれてありがとう!」
と送った。
すぐに既読が付く。
「全然。黒板にも書いたけど、同じ志望校同士、頑張ろうな」
その返事に、私は、え? と、写真に写っている黒板の下に書かれていた長めのメッセージを拡大して見返す。
「志望校同じなの、ちょっと複雑だけど、
でも一緒に○○大行けたらいいな、って思ってるから、絶対受かろうな!
片方落ちて気まずくなるの嫌だから絶対受かれよ!!(脅し)」
私はそれを読んで、なぜか顔が熱くなるのを感じた。
――これ、成川くんだったのか……
胸がどきどきと高鳴る。
――そうだな。私も成川くんと一緒に同じ大学行けたらいいな、って思う。
そう一度書きかけて、いやいや……と首を振り、その文章を消しながら、
「ありがとう! うん! 頑張ろう!」
と書いて送信した。
携帯の画面に「招待されているグループ:誕生日祝い隊」という画面が映った。
私は、「参加」というボタンを押して、下の階まで晩御飯を食べに降りて行った。
(了)
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