金魚花火

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 部屋に戻るとカーテンは開ききって、夏の日差しが白いレースのカーテンのおかげで少し柔らいだ光を降り注いでいた。  畳んだタオルケットをベッドに戻していると。    「彩未さん、どうぞ」  そう促されて小さな二人掛けのテーブルセットへ。  メニューはフランスパンのフレンチトーストにグリーンサラダとウィンナー、ベリーの入ったヨーグルトの容器が一つのプレートの上に載っていて。  真っ赤なスープカップに野菜スープ。  思わず写したいくらいの映えモーニングにクロくんの腕前がまた上がったと思った。  いつも家で作ってくれるのも美味しいけれど、多分このグリーンサラダのドレッシングはクロくん手作りだろうな、スープはどんな味だろうって想像して。 「ん?」  向かいに座ったクロくんが私の顔見て首傾げて笑ってるのは、無意識に私が微笑んでしまってたからだと思う。 「あ、うん、いつも通り美味しそうだなって」 「ん、美味しいといいな、食べよ! 彩未さん」  促されてまずはスープから。  一口含んだ瞬間広がる旨味、クロくんってばさすがすぎる!! 「うわーん、深い、甘みがある!」 「玉ねぎを先にレンチンしたらさ、甘くなるの、多分そのせい」  へえ、っと同じようにスープを飲むクロくんに微笑んで、あれ……。  クロくんの手に持つマグカップが私の持つこの赤いスープカップと対になっているような青いカップに。  心にポトンと濁った黒い何かが落ちてくる。  そんなのあたりまえじゃん、ね。  クロくん言ってたもん、1年前に彼女がいたことがあるって。  その彼女がここに来てたことだって、あるに決まってる。 「ドレッシング、酸っぱ過ぎてない?」  サラダを食べながら手が止まってしまった私を見てクロくんが不安げな顔をしてる。 「ううん、美味しい、サッパリしてて好きだよ」  気付かれぬように微笑んで、喉元に詰まってる何かを必死に飲み込もうと珈琲で流し込む。
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