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「やっぱり」
翌週、出勤すると、ルイが声を掛ける前にアサが話を切り出した。
「SNSで話題になっていましたね」
「僕も、土日ずっと画面に貼り付いてた」
「あたしはずっとスクショ撮ってた」
「佐崎さんえらい。僕も撮ってた」
「だろ? 室長もえらい」
「やったぜ」
「そうか」
アサが苦い顔をする。
「画面を保存すれば良いのか」
この優秀な巡査長は、たまにどうしようもなく機械に弱くなることがある。
「じじ臭いことをお言いじゃないよ。室長、共有にアップしとくから資料にして」
「センキュ」
「おはよーございます!」
そこへ、五条メグがやって来た。
「五条さんおはよ。金曜はありがとうね」
「こちらこそ! おじさんが皆にお礼言ってました! あ、そうだ。SNSですごい話題になってたから」
「スクショした?」
「うん。あ、えっとね、皆が本文のスクショすると思ったから、私その投稿についたコメントのスクショしといたよ」
「うーん」
ルイとナツは腕を組んで唸った。
「賢い」
もはやついて行けないという顔のアサは、共有にアップされたスクリーンショットの投稿を読んでいる。
「やっぱり、有力なのは裏にそう言う装置が付いている、ですね。液体の方に仕掛けがあって、それこそ特殊な照明を当てると目立たなくなる塗料が混ざっているのではないかと」
「そんな塗料あるの?」
「わかりません」
「本当に毎晩ああだとしたら、一番怖いのはあの社長だって声も多かったよ」
ナツが伸びをしながら言う。
「友達のみならず、全世界に配信しちゃうんだもんなぁ……」
「『壁の血が消えなくなったらこの人どうするんだろうね』」
アサが読み上げた。それはメグがアップした、投稿に対するコメントだ。彼は顔を上げる。少し悪戯っぽい顔だ。ルイとナツ、メグも視線を見交わす。
「……そう遠からず、連絡来そうですね」
アサの予想は当たった。数日後、蛇岩から内線が掛かってきたのだ。今からそっちに行っても良いか、と。
「こちらからお伺いしますが……」
「そう言う話は都伝でしたい」
「お待ちしております」
ほどなくしてレンはやって来た。今日はルイがお茶を淹れる。
「キャリアの警視だってお茶くらい淹れられるぞ……」
「何に張り合ってんのさ。あたしがお茶淹れるのはノンキャリだからじゃなくて、淹れ方知ってるからだよ」
ナツに笑われた。
一同がテーブルに就くと、レンはお茶を一口飲んでから、
「南雲から連絡があった」
「血が消えなくなったんですか?」
「よくわかったな警視」
「いや、そう言う投稿がSNSにあったんですよ。五条さんが見付けて来てくれて」
そう言ってメグを見ると、赤髪のコンサルタントは胸を張って誇らしげにしていた。
「あいつらしいオチと言えばそうだ。なんとかしてくれ、だとよ」
「わかりました」
佐崎がしたり顔で立ち上がる。狙撃を得手とする警部補は、自分のロッカーを開けると、ライフルの電動ガンを取り出して、
「やりましょう」
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