メグの「おじさん」

1/2
前へ
/12ページ
次へ

メグの「おじさん」

 東京都千代田区、警視庁本部庁舎地下。都市伝説対策室。 「おはよーございます!」  コンサルタントの五条メグは、いつもの時間に出勤してきた。佐崎ナツ警部補(彼女は出勤が異様に早い)、室長である久遠ルイ警視、事実上のまとめ役である桜木アサ巡査部長が早めに出勤して、それから少しして出勤してくる。染めた赤毛にゴシックロリータ風のワンピースでのお出ましだ。  メグは平たく言えば霊能者である。怪異とそうでないものの区別が付き、怪異についてはその質や正体まで看破してしまう。戦う手段はないが、分業制の都市伝説対策室……通称・都伝の中ではそれで充分だ。  ゴシックロリータ風のワンピースは、少しばかり本人の趣味もあるが、奇抜な格好をしている方が霊能者らしい、と言うのが理由の一つでもある。 「おはよ」  唯一の同性にして、メグを妹の様に可愛がってくれているナツが笑顔で手を上げる。 「五条さんおはよう」  ルイもパソコンから顔を上げた。 「おはよう」  アサは素っ気ない。でも、その素っ気なさが良いのだと彼女は思っていた。メグは荷物を置いて手洗いとうがいを済ませると、大きなリボンが付いたブーツを鳴らして室長の机の前に立つ。 「ルイさん、話しかけても良い?」 「どうしたの?」 「あのね、ちょっとうちのおじさんが都伝に頼みたいことがあるから、九時になったらすぐ来るって」 「なんだって?」  それに反応したのはアサとナツだった。 「五条さんのおじさんって?」  二人はメグのおじを知っているのだろう。困惑したような顔をしている。 「メグのおじさんってそりゃあ……」  ナツが言いかけた時だった。ドアがノックされる。 「あ、おじさんだ」 「どうぞ」  アサが声を掛けると、ドアが開いた。入室してきたのは、背の高い男性。 「──蛇岩警視正!?」  蛇岩レン警視正。ルイの前任にして、指名した張本人。 「おお、おじさん時間ピッタリ」 「警察官とあろうものが時間破っちゃおしめぇよ」 「五条さん、警視正のことおじさんって……本当に親族だったの!?」  ルイは目を剥いて身を乗り出した。その様子を見てナツが声を殺して笑っている。アサが苦笑しながら、 「そうです。レンさんは五条の……母さんの兄さんか?」 「そうだよ。私のお母さんのお兄さん」  伯父ということか。そこまで理解してから、ルイは目を瞬かせ、 「えーっと、今回の相談者は警視正ということですか?」 「ああ。そう言うことになる。ちょっと面倒臭いことになっててな……」 「レンさん、とりあえずあちらのソファにどうぞ。お茶を淹れます。室長、レンさんからお話を」 「おう。邪魔するぜ」  レンはすたすたと奥の応接スペースに入って行った。ルイはナツに促されて追い掛ける。メグがその後に続いた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加