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メグの「おじさん」
東京都千代田区、警視庁本部庁舎地下。都市伝説対策室。
「おはよーございます!」
コンサルタントの五条メグは、いつもの時間に出勤してきた。佐崎ナツ警部補(彼女は出勤が異様に早い)、室長である久遠ルイ警視、事実上のまとめ役である桜木アサ巡査部長が早めに出勤して、それから少しして出勤してくる。染めた赤毛にゴシックロリータ風のワンピースでのお出ましだ。
メグは平たく言えば霊能者である。怪異とそうでないものの区別が付き、怪異についてはその質や正体まで看破してしまう。戦う手段はないが、分業制の都市伝説対策室……通称・都伝の中ではそれで充分だ。
ゴシックロリータ風のワンピースは、少しばかり本人の趣味もあるが、奇抜な格好をしている方が霊能者らしい、と言うのが理由の一つでもある。
「おはよ」
唯一の同性にして、メグを妹の様に可愛がってくれているナツが笑顔で手を上げる。
「五条さんおはよう」
ルイもパソコンから顔を上げた。
「おはよう」
アサは素っ気ない。でも、その素っ気なさが良いのだと彼女は思っていた。メグは荷物を置いて手洗いとうがいを済ませると、大きなリボンが付いたブーツを鳴らして室長の机の前に立つ。
「ルイさん、話しかけても良い?」
「どうしたの?」
「あのね、ちょっとうちのおじさんが都伝に頼みたいことがあるから、九時になったらすぐ来るって」
「なんだって?」
それに反応したのはアサとナツだった。
「五条さんのおじさんって?」
二人はメグのおじを知っているのだろう。困惑したような顔をしている。
「メグのおじさんってそりゃあ……」
ナツが言いかけた時だった。ドアがノックされる。
「あ、おじさんだ」
「どうぞ」
アサが声を掛けると、ドアが開いた。入室してきたのは、背の高い男性。
「──蛇岩警視正!?」
蛇岩レン警視正。ルイの前任にして、指名した張本人。
「おお、おじさん時間ピッタリ」
「警察官とあろうものが時間破っちゃおしめぇよ」
「五条さん、警視正のことおじさんって……本当に親族だったの!?」
ルイは目を剥いて身を乗り出した。その様子を見てナツが声を殺して笑っている。アサが苦笑しながら、
「そうです。レンさんは五条の……母さんの兄さんか?」
「そうだよ。私のお母さんのお兄さん」
伯父ということか。そこまで理解してから、ルイは目を瞬かせ、
「えーっと、今回の相談者は警視正ということですか?」
「ああ。そう言うことになる。ちょっと面倒臭いことになっててな……」
「レンさん、とりあえずあちらのソファにどうぞ。お茶を淹れます。室長、レンさんからお話を」
「おう。邪魔するぜ」
レンはすたすたと奥の応接スペースに入って行った。ルイはナツに促されて追い掛ける。メグがその後に続いた。
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