南雲邸へ

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「なるほどなぁ」  庁舎に戻ってからレンに内線をかけると、彼はすぐに都伝に飛んで来た。こちらからお伺いします、とルイは言ったが、 「そう言う話は都伝で聞きたい」  と本人が言うので来てもらったのである。 「はい、おじさん、緑茶ですよー」 「メグ、怖い思いさせて悪かったな」  姪が怯えていた、という話を聞いたレンは眉を寄せて詫びる。 「良いの。仕事だから。感情としては怖かったけど、皆いるから不安はなかったし」  けろっとした顔で言う。切り替えの早さに、ルイは舌を巻いた。 「室長も悪かった」 「いえ、僕こそ仕事ですから。お役に立てず、すみません」 「あいつも良い大人だ。気にすんな」 「そうは言っても」  ナツが目を細めた。刑事モードからまだ抜けきっていない。 「あの人、そう遠からず自分から助けてって言ってくると思うけどね」 「そうだな」  アサは苦笑している。レンも腕を組み。 「配信しちまったら状況は変わるかもしれねぇな」 「どうしてですか?」 「室長」  ルイが首を傾げて尋ねると、レンは片目を閉じた。 「都市伝説とは何だ?」 「消極的な信仰の具現化です。こうだったら怖くて面白いのに、こうだったら嫌だからホラーとしては面白い……って、あー、つまり、配信して多くの人の目に触れたら、その分『こうだったら怖くて良い』の形が増えるってことですか?」 「そう言うこった」  都市伝説とは、消極的な信仰の具現化である。ルイが言った様に、「こうだったら怖いのに」「こうだったら嫌だな」という想像が広義の「信仰」となり、怪異は力を得る。  なので、南雲がインターネットの動画サイトで配信し、それを見るなり伝聞で知るなりした人間が、あれこれ憶測を立てる。それは「噂」であり「信仰」だ。噂の尾ひれとは、宗教書の外伝なのだ。その数だけ信仰が増えていく。 「だから、変質するよ。元々、物理的にやばいもんじゃなさそうだから……これからやばくなる可能性もあるが、テケテケレベルまで1日2日で変貌するとも思えん。生首の概念として血を流すことが本旨だからな」 「そうですね。南雲氏が賢明なら、まだすぐに対処できる程度で呼んでくれるでしょう」 「賢明だと思いたいねぇ。何かあった連絡させてくれ」 「勿論です」  ルイは頷いた。 「いつでも連絡してください」
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