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《 ブラボー!! 》
席から立ち上がり叫ぶ人々、大きな拍手、会場が歓喜の渦に呑まれていた
舞台上でスポットライトをあびる青年は、周囲の歓声に応えるように一礼をした。
洗練された完璧な佇まいには誰もが感嘆の息を溢すほど、、美しい。
「お待ち下さいっ」「少しだけでもお話を!」
「申し訳ありません。急いでますから」
一刀両断。
アンコールや引き止める人々を気に留めることもなく、彼は足速に去っていく。
薄い微笑みを浮かべ、簡素な断りを口にするだけでも、人々を魅了してやまない。
人形。一言で表すのならそれが似合うだろう。
すらっとした体に、小さい顔。青い目はまるで海の奥深くを映し出しているよう。
背中まである銀髪は光を反射してキラキラと輝いていた。
誰もが言った。
なんて、美しい演奏なのだと。
なんて、美しい姿なんだろうと。
押し寄せる大衆をSPによって守られながら、
数少ない荷物をまとめて、外で待機する車に乗り込んだ。
握るスマホに映るカレンダーには、「日本」とだけ。記されている
頭に浮かんだのは、丁度その国にいるであろう幼い頃からの友人の姿。
あいつは、元気だろうか。
久しぶりの再会に、思いを馳せながら、通り過ぎる景色をぼんやりと見つめた
夜の煌めく街の中を車は静かに走り出す。
シフォン・レスティアーノという美しき神童を乗せて。
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