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「これ、お願いします」
注目を浴びる中、さっさと手に取ったのは目的のキャップとサングラス。
相変わらず何処か上の空の店員に声をかけると、「は、はい」と歯切れの悪い返事が返って来た。
「おい、早く行くぞ」
「はーい」
会計を済ませ、スマホを見ながらニヤニヤしているアレンに声をかけた。
「あ、ちょっと待って」
「何」
と思いきや、手を掴まれて化粧室まで引っ張られた
「は?」
人を避けながらどんどん進んでいくアレンに、呆気に取られながら、されるがまま。
何処かで歓声とも取れる高い声が上がった。気がしなくもない
____________
「はい、ここ座って」
連れ込まれた先。
指さされた場所は鏡の前、背もたれのある椅子。
扉を閉めるアレンをなんとなく目の端で捉えながら、ゆっくりと腰掛けた。
「何する気だ?」
「まぁ、ちょーっと待っててねー」
「っ、へ?」
ふと、冷たいものが頬を掠めた。
背後を振り返ろうとするも「前を向こうか」の一言で終わってしまう。
「ッッ、ん?」
今度は何だ。
首にアレンの冷たい手が当たったかと思うと、一気にパーカーの中に入れ込んだ髪が外に出た。
軽く指で透く感触が何処か心地よくて、でも鏡に映る姿を見たくなくて。目を伏せた。
「チュッ」
「相変わらず、綺麗な髪だね」
「、、、何?」
驚いて視線を上げると、映ったのは己の髪に口づけを落とすアレン。
こいつは何がしたいのだろうと、驚きつつも鏡越しにじっと見つめた。
そしてふっと笑ったかと思うと、
徐ろに何処からかブラシを取り出した。
「はーい、動かないでねー」
「、、、、」
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