束の間の、、はず?

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「髪、さらさらすぎてまとまりにくい」 「じゃあヤメロ」 先ほどから、俺の髪を取っては編むを繰り返す。お互いが無言のまま。 ようやく口を開いたかと思えば、、褒め言葉かどうだか分からない言葉、、なんだこれは。 「くすぐったい」 「もうちょっとだから、我慢我慢」 ちょこちょこ首筋に当たる指先が、ぞわぞわして気持ちが悪い。 でも、今立ち上がれば確実にどやされる。 アレンの冷たい視線が頭をよぎって、はぁとため息が溢れた。 鏡を見ようにも、顰めっ面をした自分と見つめ合うだなんて普通に無理。   「私の顔が良すぎるせいですね」 ムカつくセリフが頭に浮かんで吐き気がした。 何処ぞナルシ野郎だったら喜んで自分の顔面見るんだろうな。 「はい、できたよ」 開始から10分程。 アレンの言葉にどっと疲れが。 「見て、これ」 満面の笑みで差し出したのは、どうやら俺の後ろ髪。 一房一房が絡み合っていて、、 「どうなってんだ、これ?」 「編み込みだよ。せっかく長いのにお前なんもしないから」 「どう?結構上手くない?」 「、、器用だな」 後頭部に手を当てると、凸凹とした感触があった。 我ながら鬱陶しいと思う髪が、まとまっているおかげで楽だ。 「きつく編んでるから、よっぽどの事がない限り取れないし」 解ける心配もないようだし。 さっき買ったキャップを被って、サングラスをかけた。 フードは被る必要はないが、首元はなるべく出したくはない。 パーカーのチャックを上まで上げて、顔や手。至る所に日焼け止めを塗りたくった。 「シフォン」 「何」 「早く出ようか。」 にこやかな笑顔で言い放つ言葉は悪魔の一言。  『NORSTON』社長。日本初来日。   第一号店視察へ。 「だってさ」    「、、、」
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