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驚くほど静かに、コースターは上へと上がっていく。
気がつけば、もう頂点へと達していた。
ヒュッ。
そんな音が耳に届いたかと思った途端、目の前の景色は一転。
突然の急降下と激しい風が襲ってくる、被っていたパーカーのフードもあっという間に取れてしまった。
「ぎゃああああああああぁああぁぁああああ、、、
断じて俺の声ではない。
あり得ない声量と、いつまで声を出し続けるのか。疑うレベルの叫び声をあげるのは、後ろの主。
なんかではなく、
となりのアレン。はっきり言ってうるさい
対して後ろの奴。
落ち始めた瞬間から、何も聞こえない。気配は感じるくせに一切の無。
逆に怖い。
これを後で語ったら、冷静すぎる俺の正気を疑われた。何か解せない。
「はーい。お疲れ様でした」
あっという間に定位置へ戻ってきた。
「ほら、行くぞ」
「あ、はーい」
着いた瞬間、こちらをギョッと見てきたスタッフからの視線。さっさと顔を隠したい&この場から離れたい俺は帽子を掴んですぐに被り直した。
白目をむいて気絶している後ろの奴は放っておくとして、問題はアレン。
と思っていたがとんだ杞憂だったようで。
あんな叫び声を上げておきながら、当の本人は何事もなかったみたいだ。
ケロっとしてやがる。
「お前さっきの声なんだよ」
「何かテンション上がっちゃって。耳栓してたし大丈夫でしょー?」
「別に」
「次、どこ行く?もうすぐ一般客入ってくるみたいだけど?」
「なんでもいい」
人気のあまり無い園内は、これから人が入ってくるなんて信じられないくらいに、静かだった。
流れる妙なテンポの音楽が気味悪く感じるくらいに。
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